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2021/11/17 09:00





長野県のワイシャツメーカー フレックスジャパン株式会社代表取締役矢島さんに取材をさせて頂きました。長野県上田市に隣接する千曲市で80年以上、地元に根付いた事業を展開されています。フレックスさんでは、アンドエシカルの携帯食事用エプロン『eptenu(えぷてぬ)』の生地の縫製・仕上げをして下さっています。技術力はもちろんのこと「長野県SDGs推進企業」として、また「子育てサポート企業」として、くるみん認定も受けている優良企業です。


ワイシャツメーカーである会社で、ジャケットや女性用ビジネスシャツ製造を始め、さまざまな事業を展開され、近年ではSDGsへの取り組みも注目を集めています。その根底には、ご自身の体験やさまざまな人との出会いを通じて感じた気づきに根ざした想いや哲学がありました。

インタビューを通じてその想いを紐解いていきます。

- 「でも、働いているのは男だけじゃないんですよ!」 - 


ーフレックスジャパンさんのことは、シャツメーカーとして存じ上げていました。今はシャツ以外の事業展開もされていると伺いました。

 

はい。アパレルメーカーという位置付けではあります。

もともとワイシャツから始まりましたが、シャツの生地でジャケットやパンツをつくっても面白いのではないか?という意図で、事業を広げました。

きっかけとしては、競争の中で生き残っていくためでしたが、おかげさまで一部のお客様にはジャケットメーカーとしてフレックスを捉えて頂いているケースもございます。

 

アイテムには、シャツ、アウター、ジャケットという形で展開していきまして、現在は女性用のシャツも作っています。

 

男女雇用機会均等法以降、1990年代〜2000年代にかけて、「職場で着れるシャツがないので作って欲しい」と女性の方々からリクエストを頂きました。

 

女性アパレルは男性アパレルの10倍のマーケットと言われていましたが、その分競争も激しい、となかなか踏み出さずにおりました。

 

そして私が社長になって数年たった時、たまたまある新聞社の女性記者の方に、女性向けシャツに関する取材を受けまして、その懸念点などをお話したんですね。

そうしましたら、明らかに怒り出されて(笑)。

 

「矢島さんは、ワイシャツっていうのは働く男たちの応援団って言われているじゃないですか。でも、働いているのは男だけじゃないんですよ!」

 

って言われたんです。

 

その時、「あぁ、確かにそうだ」と。

ワイシャツを分解すると、一つの要素は「シャツ」、もう一つの要素は「働く」ということになります。確かに、働いているのは男性だけじゃない、女性も働いているのだと、その女性記者の方の言葉をきっかけに考えさせられました。

 

通常、女性用シャツはファッションの切り口からのデザインが多いのですが、私たちは女性用のビジネスシャツのパイオニアだと思っています。

 

ただ、まだ完成しきれてはいないと考えています。


なぜかというと、私たちの会社でもホワイトカラー職に女性がついてくれるようになり、活躍をしてもらっています。ですが、まだまだ社内の女性が少ない。

実際に自社製品である女性用ビジネスシャツを着用し、バリバリ働いている当事者がいないと良くなっていかないものなのです。
そういった意味での、女性の層が、当社内ではできていない。

 

働く人たちに「満足!いいシャツだね」と言われるものを目指して、引き続き作っていきたいと思っています。






- 他のものにはとって代われない役割を負いながら仕事をする - 


少し話は脱線しますが、男社会の中で女性のキャリア職の方が誕生することは本当に大切だと考えています。

難しい点としては、男性側からの偏見もありますし、あと女性はロールモデルのいない中でキャリアを作っていかないといけないということもあります。

 

これも一つ大きな課題として考えています。

 

10年ほど前、富士通グループで初めて女性役員になった方のお話を、男性20人くらいで聞く機会がありました。大企業の重役の方もたくさん参加されている会でした。

 

彼女が就職されたのは、男女雇用機会均等法の前でしたが、性差のない働きやすい職場だったそうです。嫌な思いをしたことは一切なく、気を遣われているのが逆に気後れするくらいの職場だったと言うことでした。

 

とにかく仕事がすごく面白くて、ある時管理職になる試験を受けるタイミングが来たのですが、「偉くなりたいわけじゃない。仕事がしたいんだ」と拒否したとのことでした。

 

また上司から管理職になる試験の誘いを受けて再度断ったところ、当時の上司の方に怒られたそうです。「お前はいいかもしれないが、自分が偉くならないで次に続いていく世代はどうするつもりなんだ?」と。

 

その言葉をきっかけに、彼女は試験を受けたとおっしゃっていました。

 

その場にいた男性みんながうなづいていました。

「そういう言い方があるのか!」と。

 

また、彼女のお話では仕事よりも苦しかったのは、母親との関係だったとおっしゃっていました。

 

「子どもを置いて働いていて、母親としてどういうつもりだ?」と母親に言われたとのことでした。

 

働きながらも、”母親”としての後ろめたさを感じていたそうです。

ただ、その娘さんが就職するにあたって、彼女と同じような職種についてくれたことがきっかけで、心の重荷は降りたと言っておられました。

 

子どもは母親だけが育てるわけじゃなくて、地域・社会が育てるものじゃないですか。

国の宝だと思うんですよね。

 

父親も当然育てますが、父親と母親はやはり違いますよね。

他のものにはとって代われない役割。お子さんがいる場合はそれを負いながらも仕事をしなくてはいけない。


それまでは自社の中で女性がまだ携わってない分野に携わってもらう際、壁があるといった時思いつくのは「男性たちの偏見」だと思っていましたが、実際にはそれだけじゃないなと気づくわけですよ。

 

女性が自ら、あえてキャリアを目指すという動機付けも必要だし、

職場を離れた時に、負うものがあるんだなというのを気づかせてもらいました。